日本人の体型に合う設計
スーツにおいて仕立ての良し悪しが顕著に現れ、着心地を大きく左右するのが「肩回り」といわれています。
もちろん、inBlueのスーツも肩回りの仕立てには特にこだわりをもっています。
肩の美しさを表現するためにサルトリア仕立てのしっかりとしたラインを残しつつ、肩幅の出し入れだけでなく、前肩補正、撫で肩/いかり肩補正、アームホールの深さ調整など各種特殊補正を行うことも可能です。
また、日本人に多い巻肩(肩が前方向に巻く体型)もカバーできるようアームホールの形状を独自に開発し取り入れている点も特筆すべき点です。
単なる「楕円形状」ではなく「そら豆形状」の小振りなアームホールは、前肩部分にスペースを作ることが可能となり、見た目はより美しく、そして着心地の良さを極限まで追求しています。
立体感を生み出す芯地
芯地とはスーツを支える骨のようなもので、ジャケットの前身頃に入りハリ・コシを与え、ジャケット全体のシルエットや立体感を決める重要な要素の一つです。
芯地は大きく分けると、馬の尾など動物の毛で作られた「毛芯」とアイロン熱等で接着する「接着芯」の2種類に分けられます。
inBlueでは、前身頃・ラペル(衿裏の表地と芯地を縫い合わせる工程=ハ刺しを含む)など、全ての芯地に毛芯を使う「総毛芯仕立て=フルキャンバス」を用いています。
総毛芯仕立てのスーツは接着芯と違い、シルエットに美しい立体感を生み出し、復元力も高いので型崩れせず長期間に渡って着用可能です。
難しいデニムをどう縫製し仕上げるか
どんなに技術の高い縫製工場でも、デニム素材をウール素材のように扱い、ましてや着心地の良いスーツに仕立てていくことは至難の業です。それは、ウールの素材とデニムの素材には、根本的な違いが存在するからです。
そもそも、ドレープ性が高く生地の柔軟性が高いウールの生地と異なり、デニム生地には綿素材独特の硬さがあります。これはinBlueのオリジナルデニムが、いくら薄く、軽く、しなやかに織られている生地でも、デニム生来の特徴ゆえ変えることはできません。
この前提条件のもと、inBlueではウールのスーツと同等またはそれ以上の着心地を実現していくことに注力しています。
例えば、肩やアームホールの可動域を広く確保し立体的に構築する「いせ込み」という技術があります。
※いせ込み:肩の前身の生地に対して、後ろ身を10㎜前後多くし肩甲骨周りの可動域を持たせたり、アームホール周に対し18㎜程度生地を多く使い袖付けを行い前肩体型に対応する。
いせ込みの技術は、柔軟性のあるウール素材でも高い縫製技術とアイロンワークが必要となります。言うまでもなく、デニムのようにハリがある素材で実現するのはさらに困難を極めますが、inBlueでは肩とアームホールのいせ込み技術を高いレベルで実現しています。
また、気温や湿度による生地の伸縮に関しても、ウール素材では、長年蓄積したデータや職人の経験により、ある程度予想することが可能です。
一方で、inBlueのオリジナルデニムに関しては全てがオリジナル規格であるため、新しい生地ができるたびに生地の伸縮性等を独自に検証し、その生地ごとに合わせた縫製やアイロンワークを取り入れています。
熟練した職人による手間暇かけた製造工程があるからこそ、スーツを纏ったときに感じる圧倒的なフィット感と、生地本来の質感を最大限に引き出した美しい仕上がりが実現できているのです。
このようにinBlueのスーツは単なる衣服という域を超えた、「特別な一着」をお届けするため、細部にわたり心を込めて仕立てられています。
手に取っていただければ、必ずやその違いを実感いただけることでしょう。