President's Blog
社長ブログ

#01 文化、経済、環境…… すべてを地球ごとで循環させる、
サスティナブル・キャピタリズム。(後編)

2021年3月12日、倉敷のロイヤルアートホテルで美術家の長坂真護氏のギャラリーオープンイベントが行われました。
今回、倉敷にギャラリーを誘致したホテルの運営元である株式会社ストライダーズCEO 早川良太郎氏も交え、お二人のこれまでの軌跡と世界を見据えた今後の活動についてお伺いしました。
総インタビュー時間は100分間にも及び、白熱した意見が飛び交う中、各々のビジョンを余すところなく表現できた対談となりました。
全編、中編、後編の三部作でお楽しみください。

Interviewee
MAGO/長坂 真護
Nagasaka Mago
MAGO CREATION株式会社 代表取締役美術家

2009年 自身が経営する会社が倒産し路上の画家に。
2017年 ガーナのスラム街“アグボグブロシー”を訪れ、先進国の投棄した電子機器を燃やし日当5ドルで生計を立てる人々と出会う。
サスティナブル・キャピタリズムを合言葉に、廃棄物を価値あるアート作品に再生し販売し、その売上による資金で、ゴミのリサイクル工場をガーナに建設を進めている。
映画監督Kern Konwiser 氏(エミー賞受賞)により
この軌跡を追ったドキュメンタリー映画
“Still A Black Star ”が映制作され、現在公開に向け準備中。

Interviewee
早川 良太郎
Hayakawa Ryotaro
株式会社ストライダーズ 代表取締役社長&CEO

不動産事業、ホテル事業、海外事業を軸に企業活動を展開し、国内外で12社のグループ会社を傘下に持つ投資会社を経営。
「Stride With Challengers “挑戦者達と共に闊歩する”」というスローガンのもと、ステークホルダーと感動体験を共有し、より良い世界を創造することを目指しSDGsの取り組みにも参画。
また、学生時代には、全米屈指の野球強豪校カンザス大学で投手として活躍した経験から、現在ではアスリートへの支援も積極的に行っている。

Interviewer
松岡 浩文
Matsuoka Hirofumi
株式会社ナッシュ 代表取締役

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、三井造船株式会社に入社。
大型船舶や産業機械の海外営業に従事していたが、突如、妻の実家の家業を継ぐために2018年ナッシュ入社、翌年 代表取締役就任。
同社が展開する世界初のオーダーデニムスーツ専門店=inBlueでは、ブランディングとCRM(顧客管理)に注力し顧客を獲得。
今後の展開は「あたたかいEC」を目指し高級オーダースーツがECで売れる世界を作ること。
また「大量生産・大量消費・大量廃棄」というデニム産業に対するアンチテーゼとして、超小ロット生産の自社オリジナル生地のみを使用し、かつ受注生産により在庫を持たないビジネスモデルを構築することで、SDGsへのアプローチを続けている。

#01 文化、経済、環境…… すべてを地球ごとで循環させる、サスティナブル・キャピタリズム。(後編)

バンクシーは問題提起する芸術家だけど、
僕は問題解決する芸術家だ

— 松岡:MAGOさんの今後のフューチャープランについてお伺いします。
これまで、ガーナに学校を建設し、ギャラリーの加盟店システムを拡大してきましたが、今後は2030年までにガーナにリサイクル工場(ギガファクトリー)を建設しようと考えていらっしゃるそうですが。

— MAGO:現段階で工場建設費として3000万円確保しています。最近はギガファクトリーという考えから変化し、工場をステップバイステップで作っていくという方針に切り替え、まずは第一町工場を作ガーナに作りたいと考えています。その3000万円でも現地では何億円もの経済効果になる。彼らの月の平均給与はわずか5000円ですからね。

— 松岡:相当なインパクトですね。それができたら今まで野焼きしてガンになっていたガーナの人たちが……。

— MAGO:相対的に減って行くし、うちの工場で働いた方が給与もいいですし。町工場の方が、雇用を増やせるというメリットがあるんですよ。最先端の工場はオートメーション化されていて、もちろんそれもいいなって思っていたけど。でもやっぱり路上の絵描きからゆっくり上がってきた自分から見ると、このやり方に尽きるなと。デカイ破砕機を買って、みんなで一緒になって手分け作業して、地球を綺麗にしようよって。
50万トンのゴミの埋蔵量があるんですよ。それをお金に変える、いうなれば埋蔵金に変える。そういうことをやっていきたいんです。2030年までに工場が順々に増えれば、その時には世界的な評価も高いと思う。
先ほどのグラミン銀行のユヌスさんと同じで先進国と貧困国を中和化する画期的な発明だと思います。10年後にはある程度の投資も完了し、様々な地域のMAGOギャラリーも出来ていると思う。倉敷にできて、横浜にもできて、2021年後半にはパリ、香港、ニューヨークにも出来る予定です。

— 松岡:ビジョンが現実のものになっていくのが見えますね。

— MAGO:10年やって……2030年まであと8年9年、じゃあその時、ガーナの一国が救えたらね。でもそれが僕のゴールかって言ったらそれは違って、その先は、世界飢餓、環境問題、全世界の貧困を救うソリューションカンパニーになっていると思う。世界中にねMAGOギャラリーがあればそこを拠点・基地にして、情報収集しながら、貧困地を一気に攻めるような存在に絶対なりたいですね。

「利益で愛は生まれないけど、
愛で利益は生まれます。」

— 松岡:テックが先行して、フィロソフィーがようやく追いついてきた時代とおっしゃっていましたが。

— MAGO:先進国が出来上がった瞬間にバブルが崩壊して、その後から、テクノロジーが育ってきて、飢餓とか貧困とかの世界情勢の情報がインターネットでいつでも手に入る時代になった。地球ごとで物事を考えていい時代になった。
昔、世界平和なんか言っていたらバカにされていた、5年前でも笑われていた。でも前澤さんだってみんな世界平和やるって言っていますよね。あれは、世界平和を唱えていい時代になったから。
僕は先人に感謝しますね、地球ごとで考えていい時代を作ってくれたことに。戦後は、生きるのに必死だった。それが豊かな時代になって、身の保障、恐怖にさらされる瞬間が確実に減って、今は本当に遠いところを見ても、ちゃんとした志を持ってやっていけば評価される時代になった。

— 松岡:MAGOさんの「利益で愛は生まれないけど、愛で利益は生まれます。」という言葉にハッとしました。

— MAGO:資本主義の結果は、地球が怪我しちゃった。母なる大地が、惑星がね。僕はガーナを救いたいって思って本気でやっていたら利益が生まれたんですよ。利益を追求する時代は終わってサスティナブル精神で愛を追求する。
僕は一千億円企業じゃなくて、去年3億円しか稼いでないけどその3億円の内容がどれだけ美しいか。ここに幸福価値があって、いいメンバーが揃っている。これからの我々のモチベーションに欠かせないものなんですよ、愛っていうのは。それが評価される時代がきたなって。

CSRの概念って企業がするものみたいなイメージになっているけど、
本当の主語はヒューマンなんじゃないの?

— MAGO:こないだTwitterで呟いたんですけど、「CSR」という考え方が僕は間違っているって思っています。「コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ」って訳ですが、なんで「コーポレート」にしたの? と。僕はもう「ヒューマン・ソーシャル・レスポンシビリティ」じゃないかって思う。

— 松岡:なるほど。やるべきは企業としてじゃなくて、人としてということですね。

— MAGO:地球に対する責任感を、人間一人ひとりが持つという教育が必要だなと思っています。

— 松岡:コーポレートだと他人事になりますよね。

— MAGO:僕ら労働者は、稼いでいる企業よ、お前らが頑張れよみたいな考え方です。CSRが染み付いて、企業がするものというイメージになっているけど、本当の主語はヒューマンなんじゃないのって。ひとり一人が意識と責任を持っていれば、企業としても社会としての基盤もよくなるし、そういう教育がこれから必要だと思っています。

僕は幼少時代、人が使ったランドセルは
担ぎたくないと言うと思う

— 松岡:最後にお聞きしたいのが、MAGOさんがドネーションは受けないという話をされていましたが。

— MAGO:投資とか出資とかはいいですが「ドネーション(※)」に関してはそれが存在している以上、世の中が平和にならない、平等にならないって思っていて。この間も「日本の小学生たちが使ったランドセル100個をドネーションしてほしい。」と言われて。それに対して、僕は子供の頃に人が使ったランドセルを担ぎたくないと思うと言ったんですよ。なんで先進国のお古を…なんか悔しいんですよ。
リユースっていう意味はいいですけど、マインドの問題? なんでそういう条件ばっかりなんだって。先進国が上から施しを与えるみたいな。そういう感情がはびこっている限り、本当の意味では世の中変わらない。
寄付したいって人いたら、僕の1000万円のアート買ってほしいし、5000円寄付したいって言ってきたらその5000円で本を買ってほしい。僕は恩を一方的には受けたくない。だったらそれに見合う等価の価値、またはそれ以上の価値あるものを絶対渡す。だからアートを買ってくれと。
義理は人を育てない。フェアトレード(※)という考えで物事を進めていきたい。

ドネーション donation(※): 公共福祉のための寄贈や寄付など。
フェアトレード Fairtrade(※): 適正な賃金の支払いや労働環境の整備などを通して途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指すこと。

— 松岡:確かに一方的な寄付だけだとガーナが育たない、いつまでたっても自分の足で立てない。

— MAGO:お涙頂戴的な寄付とかあるじゃないですか。うちは一切してこなかった。そこは僕の強さ、本当に世の中を変えたい、貧困を変えたい、ガーナを救いたいっていう、親としての強さがある。その強さが本当に新しい概念を作ると思っていて、気丈さっていうかそういうものが必要だと思う。

— 松岡:寄付は対等ではない。

— MAGO:寄付に頼っていたら、じゃあ一回寄付するから10万円……で、終わっちゃいますよ。講演会で毎回頭下げる?絶対嫌だと思っていて。プライドが許さない。だから絶対に一方的な寄付は受け付けない。
絵を買ったら全部が動くように一体化しているから。だからなんでみんな、切り分けるんだ? と思う。例えば週末のボランティアで浜辺を掃除して綺麗にしようと。1年に1回するかしないかじゃないですか。でも、僕がサスティナブル事業をやれば毎日地球を綺麗にしているんです。今日だってそう、ガーナの絵を売っていますよ。そのビジネスのルーティンに入れた方がよっぽど加速しないか?そういう考え方なんです。(了)

編集後記

今までのデニムビジネスに出来なかったことを
新しくクリエイトしたい

— 早川:松岡さんはinBlueの「デニムスーツ」を通じてどんな活動をされようと考えていますか。

— 松岡:デニム産業は大量生産し大量消費して、おまけに売れなければ大量廃棄してしまうというモデルの上になりたつ商売です。でも、inBlueの「デニムスーツ」に使用される生地は大量生産を一切しない、超小ロット生産です。昔は100反(50メートル巻きの生地が100本)が1ロットというのが常識でしたが、当社は1反からオリジナル生地を作れる生産背景を持っています。
また、製品はオーダースーツなので受注して生地をカットして、作った生地は全部使い切っていく。とにかく無駄を出さないやり方です。今までのデニムビジネスに出来なかったことを創造したいという思いを持っています。

— 早川:なぜ、デニムでスーツを作ろうと思ったんですか。

— 松岡:30年前に先代が創業した会社は、エドウィンさんとかハリウッドランチマーケットさんなどのジーンズブランドに対してデニムの生地を企画して売るという生地の企画商社でした。それが90年代のユニクロさんを始め世の中がSPAモデル※に切り替わり企画が不要となる中で、オリジナルの生地を用いたジーンズが売れなくなってきました。
先代も今までの大量生産・大量消費を繰り返すデニムの産業構造に疑問を抱いていましたし、また誰も着手していない「デニム×スーツ」分野を開拓し、既存のデニム市場をガラっと変えて行こうと決意し、デニムスーツが生まれることになるんです。時代が時代ですし先代はサスティナビリティについて強調してはいなかったですが、その想いや存在意義が今の時代にフィットしています。それをもっと世の中に訴えかけていかないといけないなと。そんなところの親和性もあって、今回お二人と対談したいと思ったんです。

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