President's Blog
社長ブログ

29 Jan. 2025

スーツ屋が語る経営者向けスーツとは(着こなし編)

経営者がスーツを着用するということは、
自分の信頼性やプロフェッショナリズムを表現することに等しいですが、
それ以上に自らの会社がどのように世の中に価値を提供するかという姿勢の表れでもあると考えています。

第一印象というものは瞬時に形成されるのが常ですし、今後の相手との関係に大きな影響を与えます。一度付いた印象というのは、簡単には拭い去ることはできませんので、
将来のビジネスパートナーと会うときには、良い印象を与えることに越したことはありません。

このブログはシリーズ計3回で構成されるのですが、小難しいテクニックを語るのではなく、
まずは服装の根本に立ち返り「誰のための服装か」について書こうと思います。

持論としては、「ファッションは好きに楽しめばよい」と考えています。
本来、服装によって自身の考えを体現したり、オリジナリティを表現したり、
そういったことを存分にするために服は存在すると考えています。
そしてアパレルデザイナーは、まさに彼らの感受性というフィルターを通し、
彼らの感性や生き様を世の中に訴えかけています。
実際、自分自身もスーツの業界に身を置く前には、
本当にたくさん色々な種類の服を着てきました。

しかし、スーツ業界に身を置くようになって感じたことは、
「そういうわけにもいかないな…」ということでした。
うすうす気づいていると思いますが、経営者が身に纏うスーツにおいては、
どこぞの雑誌で見たイタリアのオジサマよろしく、
とにかくオシャレな雰囲気を作ればOKという訳ではないのです。

結論としては、普段のオシャレを楽しむのには自分にベクトルを向ければよいですが、
ビジネスマンという立場でスーツを着る際には、
「他人にベクトルを向ける」必要があるということです。
特に経営者という立場であればなおさらその傾向は強いです。

一見すると当たり前に思えるのですが、実際に理解できるまで時間がかかるものです。
もともとファッションに興味関心が無い方や特にスーツに頓着ない方は、
「これがスタンダードなルールです」と指南すればその通りできます。
しかし、オシャレな方や少しでも服に拘りのある方は理解し、実践するまで時間がかかります。
とにかく自分流にアレンジしたがる傾向があります。
自分の中での経験から鑑みると、比較的この傾向は経営者に強く表れがちです。
おそらく、「何か他の人と違ったことをしなければ」や「経営者だから存在感を示さなければ」
という謎の強迫観念により、
手あたり次第なんとなくオシャレそうなスーツに手を出してしまった結果と考えています。

特に私は、一般的な方と比べると何倍も服に触れてきた時間が長かったせいか、
雑誌やネットの情報等で知識は肥大化し、
気づけば上述の「自分流にアレンジしたがる人」の代表格でした。

あるとき、冷静になって自分のたどってきた服の歴史や経験を棚卸し、
改めてスーツの歴史や背景、そしてそこに存在する明確なルールを整理する機会を持ってみました。
そこで、「スーツには興味があるが、なんかしっくりこない…」
「ついつい自分の知識でアレンジしてしまう…」という方の整理になればと思い
以下の表を共有したいと思います。

服は、大別すると非フォーマル領域(一般的にはカジュアル)とフォーマル領域に分けられます。
多くの場合、服と言えば非フォーマル領域を指し、服に拘りがある人や服の知識が豊富な人は、
こちらの知識や経験に富んでいる傾向があります。それは、生活に密着するアイテムが多いからです。

例えば、学生時代にストリートファッションに傾倒した人は、
おそらくスケーター文化やアメカジ文化に触れ、
時には音楽と相まってロックやパンク等のファッションに派生したことでしょう。
さらに、二輪の免許を取り始めるころには、
男臭いバイカーやミリタリーファッションにその触手を伸ばし、
一方で90年代を最前線で生きた人は、モードやDCブランドに熱狂したことでしょう。
それらはすべて、ルールと垣根が曖昧な中でそれぞれ融合し、
化学反応を起こし発展してきたものなのです。
そして、常に根底にあるのは、
「この服を着て、他の人に自分という存在を証明していこう!」というマインドです。

一方で、フォーマル領域は正反対です。
ルールと垣根が厳格に定められ、その枠の中で最大限のオシャレを楽しむものなのです。
フォーマルウエアには「相手からどうみられるか?」という考えを主軸とし、
常に相手へのリスペクトと気遣いを大切にする文化が存在するのです。
そしてそこには、カジュアルウエアとはどこまで行っても交わりえない万里の長城のような壁が存在するのです。

いまわれわれの直面するスーツ事情は、
売る側や買う側含めこの万里の長城を「絶対的なルール」のようにとらえてしまう傾向があります。
現代において市民権を得た多様性という名の産物なのか、反射的にそのルールに反抗し、
破壊するという行為でしか自己肯定することが出来ない稚拙さの表れのような気すらするのです。
それゆえ、ベーシックなものからハズすという、紋切型のアプローチに終始し、
皮肉なことに皆均一におかしいスーツがはびこっている状況になっています。
服に拘っていると自負していた自分含め、実は我々はこういった現代のスーツ事情に大いに流され、
没個性的なキャラクターを知らず知らずのうちに身に纏っていたということになるのです。

しかし翻って考えれば、そういった現代だからこそ、そのルールをしっかりと把握し、
そのルールの中で目いっぱいおしゃれができれば、
これは圧倒的に個性的な自分を演出できるとも考えられるのです。
特に経営者と呼ばれる、自社の看板を背負う方にとっては、
このルールを明確にしインストールすることは、経営における必須科目しれませんね。


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